慢性閉塞性肺疾患(COPD)
喫煙関連の呼吸器病の代表として、慢性閉塞性肺疾患(COPD:chronic obstructive pulmonary disease)という、従来、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気があります。タバコの煙を長期的に吸入することで生じる肺の炎症性疾患であり、積年の喫煙歴を持つ中高年に多く発症する生活習慣病の1つと言えます。死亡原因の9位にランクする病気にも関わらず、また40歳以上の方の約10%弱にCOPD患者さんがいらっしゃると推定されていますが、その大多数の方は医療機関を受診せずに、放置されている状態であると考えられています。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の原因
何と言っても最大の原因は喫煙です。喫煙者の15~20%がCOPDを発症します。タバコの煙を吸入すると気管内に炎症が起こり、慢性的な咳や痰の症状が出現し、徐々に気管支が細くなっていくことによって肺の中の空気の流れが悪くなっていきます。さらには、肺の奥にありぶどうの房の様な袋である肺胞(はいほう)がタバコの煙によって破れて、大きな空洞となってしまう肺気腫という状態になると、酸素を取り込む力や二酸化炭素を排出する力が弱まり、呼吸機能が低下してしまいます。ここまで病気が進行してしまうと、治療によっても元に戻ることはありません。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の症状
日常生活の中で、少し身体を動かしただけでもすぐに息切れしたり、息苦しさを感じたり、或いはいつも咳や痰が出ている、というのがCOPDの特徴的な症状です。一部の患者さんでは、呼吸時にいつも胸の辺りでヒューヒューと音がする喘鳴(ぜいめい)や喘息に似た症状を伴う場合もあります。また、COPDは進行すると呼吸機能が低下するため、全身のあらゆる箇所に障害が出現し、栄養障害、骨格筋の筋力低下、骨粗鬆症などを伴うことがあります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の診断
長期間に渡る喫煙歴があり、慢性的に咳や痰、労作時の呼吸困難などの症状があればCOPDが疑われます。確定診断にはスパイロメトリーという呼吸機能検査が必要で、まず気道が狭くなっている状態である閉塞性障害を確認して、さらにその他の閉塞性疾患を除外するとCOPDと診断されます。胸部レントゲン検査では、COPDが進行した症例では肺の透過性が亢進した像や過膨脹した所見などが見られることもあります。胸部CT検査では肺胞の破壊像が認められます。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療
喫煙を続けると呼吸機能の悪化が加速してしまいますので、まずは禁煙が治療の基本となります。他の肺炎の予防も大切であり、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンの接種もお勧めです。薬物治療としては、抗コリン薬、β2刺激薬、テオフィリンなどの気管支拡張薬を吸入して頂きます。長時間作用型のβ2刺激薬と吸入用ステロイドの併用も有用であることが証明されています。薬を用いない治療としては、呼吸のリハビリを目的として口すぼめ呼吸や腹式呼吸などの呼吸機能訓練を行い、しっかりとした栄養管理も実施されます。低酸素血症が進行してしまった場合には在宅酸素療法(Home Oxygen Therapy; HOT)が導入されます。
COPDの患者さんにとっての治療目標は、自覚症状や生活の質の改善、日常生活における活動性の維持、COPDの進行抑制、増悪の予防、そして少しでも長生きすることにあります。当院では、積極的に禁煙治療を行っており、COPDの増悪や進行の予防にも寄与していきたいと考えております。禁煙治療についてご興味のある方は、是非お気軽にお問合せ下さい。