胆のうとは?
内臓の中で一番大きな臓器である肝臓では1日に約500~800mlの胆汁が作られ、胆管という管を通り、膵臓の出口で膵管と合流し、膵液とともに十二指腸へと分泌され、脂肪や炭水化物の消化を助ける働きをします。
胆のうはこの胆汁を一時的に溜めておく、また濃く濃縮する機能を果たしています。
胆石症とは
胆石症というのは、胆嚢のうや胆管に胆石と呼ばれる石が出来て、時に腹痛や黄疸など様々な症状を引き起こす病気です。
コレステロール結石、ビリルビン結石、黒色石の3種類に分かれ、一番よくできるのはコレステロール結石です。背景に食生活の欧米化が要因となっており、日本でもコレステロール結石の胆石症は増加傾向となっています。
胆石症になりやすい人
- 40代以降の中高年の方
- 肥満症の方
- 女性
- 多産婦
胆石症の原因
肝臓で作られる胆汁の成分は、ビリルビン、コレステロール、胆汁酸、レシチンを中心とするリン脂質です。胆汁が濃縮される過程の中で、胆汁成分に偏りがあったり、細菌感染により成分が分解されることにより、その成分が結晶となり石となります。結石ができる過程の違いで、コレステロール結石や色素結石など色々な性状の石が出来ます。様々な要素が関与しますが、体質や食生活が主な原因とされています。
胆石症の症状
胆石を保有していてもほとんど症状は起こりません。サイレントストーンと呼ばれる状態です。このうち1/3~1/2は何らかの症状が現れてきますが、多くの場合は上腹部の不快感や右背部鈍痛といった症状です。しかし、まれに激痛に襲われることもあります。これは、胆石が胆のう管という細い管につまって急性胆のう炎を起こした場合です。コレステロールを多く食べた後に、上腹部不快感が右肩や右背部へ広がる激痛に変わり、嘔吐や悪寒、発熱を伴うといったケースが見られます。また、総胆管に胆石が詰まり皮膚の色が黄色くなる黄疸が出ることもあります。
胆石症の合併疾患
胆石症の合併疾患として膵炎があります。また、急性膵炎の約5割、慢性膵炎の約2割は胆石症が原因と言われていますが、慢性膵炎は胆石症の手術により症状が改善する可能性が高いです。わずかですが、胆石症から胆のう癌を合併する率は数%あり、加齢によりリスクは増加します。
高齢者では症状のある胆石症患者の10%前後に胆のう癌が合併すると言われています。ちなみに胆のう癌に胆石症が合併している率は約80%と非常に高い割合となっています。
手術のタイミング・必要性
基本的に無症状の胆石症の方は定期的に検査をすることは大切ですが、直ぐに手術を受ける必要はありません。しかし、以下の場合は手術を検討する必要があります。
- 上腹部痛や右背部痛など、脂っこい食事の後に何らかの症状がある場合
- 中等度以上の急性胆のう炎を繰り返す場合
- 胆のう癌を否定できない場合
早期に手術を行わなければなりません。放置してしまうと重症化してしまい腹膜炎などを引き起こし、より大きな手術が必要となってしまいます。
胆のうポリープについて
胆のうポリープとは?
胆のうポリープは、胆のうに出来る隆起性病変の総称です。基本的には良性のものがほとんどで長期間に問題ないことが多い病気です。しかし、胆のうポリープの中には悪性化して、胆のう癌になるものが存在するため、胆嚢ポリープと診断された場合は、専門の施設で精密検査を受けて頂くことをお勧めします。
胆のうポリープの種類
コレステロールポリープ
胆のうポリープの約90%はコレステロールポリープです。胆のう内に多発しやすいことが特徴で、数mm以内のものが多く、10mm超えることは稀です。良性です。
腺腫性ポリープ
基本的には良性と考えられていますが、一部に胆のう癌に進展するものがあり、経過観察が必要です。
過形成ポリープ
胆のうの上皮が過剰に増殖したタイプです。
炎症性ポリープ
慢性胆のう炎の患者さんなどに起こる、粘膜細胞の増殖が原因で発生するタイプで、やはり良性です。
胆のう癌
文字通り胆のうの粘膜に出来る悪性腫瘍です。ポリープの段階で見つかる胆嚢癌は比較的早期の病変が多く、適切な治療により根治的治療を行うことが可能ですが、進行胆のう癌については、現状ではなかなか根治まで至る症例は多くありません。早期発見・早期治療が大切な癌と言えます。
胆のうポリープの症状 -どうやって見つかるか?-
胆のうポリープに特徴的な症状はありません。健診の超音波検査で偶然発見されることがほとんどで、他には胆石や胆のう炎を患った際に、画像検査で同時に発見される場合があります。
胆のうポリープの検査
血液検査
肝機能・胆道系酵素の異常や腫瘍マーカーのチェックを行います。しかし、確定診断のためではなく、あくまで補助検査という捉え方になります。
腹部超音波検査
体外から超音波を使った器械を当て、胆のうの病変を検査します。胆のうポリープの検査で最も行うことが多く、患者さんの体への負担も軽いものであります。
超音波内視鏡検査
胃カメラの先端に特殊な超音波検査機器が接続された検査です。体表からの検査に比べ、より胆のうに近い場所から検査を行うことで、詳細な情報が得られます。
造影CT検査
造影剤を注射して腹部CT検査を行います。胆のうポリープの形や大きさを正確に評価するのと同時に、胆のう癌の手術に際して、リンパ節への転移の可能性を検索したり、周囲の血管などの構造をチェックするのにも重要です。
胆のうポリープの治療
胆のうポリープの治療は、ずばり胆嚢そのものの摘出です。胆嚢ポリープの治療では、胃や大腸のポリープと同じようにポリープだけを取ることは出来ません。そのため、胆嚢摘出術を行うことになります。
しかし、胆のうポリープと診断された段階で、全ての方が治療(手術)する必要はありません。治療の対象となるのは、以下のように胆のう癌の可能性が高い場合に限ります。
胆嚢ポリープの治療が必要な方
- 胆のうポリープが10mm以上
- 経過観察の検査でサイズが以前より大きくなってきている
- 大きさにかかわらずポリープの茎が幅広いもの
- 超音波検査で癌が疑われる所見(充実性低エコー所見)がある場合
その他、採血による腫瘍マーカー(CA19-9, CEAなど)検査で悪性の可能性が否定出来ない場合は、まず精密検査をお勧めします。
手術方法
胆のう摘出術の方法には、腹腔鏡下胆のう摘出術と開腹胆のう摘出術があります。 胆のうポリープで胆嚢癌の可能性が少ない場合は、腹腔鏡下胆のう摘出術を行います。術中、明らかな浸潤の所見を認めた場合には、開腹手術に変更する場合があります。また、診断時から胆のう癌の可能性が高い場合は、開腹での胆のう摘出術を行います。
最後に
胆のうポリープの診断と治療で大切な点は、悪性であるかどうかです。精密検査を行い、胆のう癌であるかどうかを正確に判定することが重要です。また、どういった手術をするかといった治療方針の決定にも、正確な診断を行うことが重要になります。手術にならなくても、その後ポリープが大きくなっていないか、形状に変化がないかについて、定期的に超音波検査やCT検査などで評価を行う必要があります。
胆のうポリープが疑われたら、或いは胆のうポリープの評価をご希望の方は、お気軽にご相談下さい。